冬の教室における太極拳の思い出

大学時代、体育の単位を取るのに苦労した。授業がついていけなかったということではなくて、履修すること自体に苦労したのだ。他の大学のことは知らないが、私の学校では履修希望のコースをマークシート式の用紙に書き込み、それを教務課にてコンピュータにかける。体育は第三希望までリストアップして提出し、無作為抽出によってコースを振り分けられるという仕組み。第一希望が取れないことはもちろん、第三希望まで外れることもあった。そしてなぜか自分はそのオール外れという学期が周りの友達より多かったのだ。毎学期取らなくても卒業までには間に合うだろうと、初めは焦っていなかった。が、三年ともなると人より遅れていることが気になりだし、会う人に愚痴交じりに話すと、大抵の人が「コースを選り好みし過ぎでは。」という。たしかに当時人気だったテニス・アーチェリー・ゴルフなどを第一希望に据えたりしていたが、第一希望が通ったことは一度もなく、取れても二番目、三番目ばかりだったのに。心外だったがあまり人が取らなそうなものを選ぶようになった。そうしてやっと取れたコースの一つが太極拳。

単位を取るためだけに選んだ太極拳は、自分はもちろん初めてだが他にもめったに経験者はいまい、それなら優劣もほとんどつかないだろう、これで一単位ゲットだね。と気楽に教室に向かったのであった。ところで太極拳が取れたのは冬の学期(私の大学は三学期制だった)のことで、教室では裸足でと言われた。冷たい。そして、あのゆっくりした動きが意外に難しい。ゆっくり動くということが難しいといった方が正しいかもしれない。しなやかで切れ目のない先生の動きをまねしているつもりなのに、どこかぎこちない自分のポーズ。教室は寒く、変な動きのせいか身体が温まらない。周りはというと、一人だけ異彩を放つ上級者がいる以外はいずれもどんぐりのせいくらべ。毎回「これでいいのか。まあいいか、みんな同じようなもんだし」とあきらめとも安堵ともつかない思いを抱きつつ学期を終えたのだった。

そして学期末。成績を受け取ってみると判定は「C」。及第点ではあるが最低ライン。みんな揃って低レベルとたかをくくっていたのに、先生の目はしっかり優劣をつけていたのだ。これには正直なところ少々驚いたが、無欠席だったおかげで単位だけは取れてよかったとつくづく思ったのであった。こんなに低いモチベーションで参加して、先生にはおわび申し上げたい。

Submit a Comment